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型破り?なブランド論へのアプローチ
ブランディング新視点
New 2025-01-28
ブランディング新視点
ブランディングは一般的に「ブランド(企業や製品のアイデンティティ)を確立し、それを顧客に伝えるプロセス」として知られていますが、それを超えて考えると、もっと深く、哲学的で広い視野で捉えることも可能です。以下は少し「型破り」なブランド論のアプローチです。
1. ブランディングは「共感のインフラづくり」
ブランディングとは、企業や個人が人々との間に築く「共感のインフラ」づくりと考えることができます。
つまり、ロゴやスローガンは表層であり、本質は人々の中に“存在”を埋め込む仕組みです。製品を購入させるのではなく、「その存在が社会に不可欠である」と思わせること。ブランディングの本質は、顧客に共感を与えることです。ブランドが提供する製品やサービスは、単なる物質的な価値だけでなく、人々がそのブランドを通じて感じる価値観や気持ちが重要です。
例えば、スターバックスは、単にコーヒーを売っているわけではありません。彼らは「第三の場所」として、家でも職場でもない、リラックスできる場所を提供しています。この「空間」に共感を感じる人々が集まります。それがブランディングの力です。です。
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Appleの「Think Different」**というスローガン。製品を売ることを直接目的としていません。「異端であれ」と人々に呼びかけることで、社会の変革に共感を生み出しています。
2. ブランドは「文化を伝えるメッセンジャー」
ブランドはその時代や文化に合わせて、あるメッセージを伝える役割も果たします。あるブランドが「エコ」や「サステナビリティ」を大切にしていると訴えると、それは単なる宣伝にとどまらず、その時代に必要とされている価値観を伝える行為です。
例えば、Patagonia(パタゴニア)というアウトドアブランドは、単なる製品を提供するだけでなく、地球環境を守るための活動を広めています。消費者は、そのブランドを通じて「社会的な責任感」や「環境保護」という価値を感じることができます。ブランドがその文化や価値を反映させることで、共感を呼び起こし、さらに強いブランドを作り上げているのです。
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Patagoniaは単なるアウトドアブランドではありません。「地球環境を守るための活動家のユニフォーム」という価値観を翻訳しています。製品を通して「行動する人」を応援するのです。
3. ブランドは「関係性の仮想通貨」
ブランドの価値は、実際には物質的なものではなく、人々がそのブランドに対して持つ関係性によって決まる仮想通貨のようなものです。たとえば、ブランドの持つストーリーや歴史が人々の心に信頼を育むほど、その「通貨価値」は高まります。
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あなたがエコバッグを選ぶとき、ブランドロゴが付いているものを持つことで「自分がどんな人間であるか」を表現していませんか?ブランドは、そのような「個人のアイデンティティを強化する通貨」として機能しています。
4. ブランディングは「対話型アート」
ブランドを「芸術」と考える視点も面白いです。ブランディングとは、一方的に価値を押し付けるものではなく、顧客や社会との対話を通じて進化する「生きたアート」です。
たとえば、Nikeの「Just Do It」というフレーズは、スポーツをすること自体を「アートの一部」として昇華させ、顧客との感情的な対話を行っています。対話の中で顧客は自身の物語をそのブランドに投影していきます。
5. ブランディングは「時間を越えた約束づくり」
ブランドは一瞬で完結するものではありません。それは過去、現在、未来を繋ぐ「時間を越えた約束」ともいえます。
たとえば、Louis Vuittonのトランクは、19世紀から続く工芸技術の象徴であり、それを買う人は「過去の伝統」と「未来のステータス」を手に入れる約束を同時に感じ取ります。
6. ブランドは「アイデンティティの一部」
ブランドは、顧客にとって「自分がどんな人間か」を表現する手段にもなります。例えば、特定のブランドを選ぶことで、その人がどんな価値観を持っているか、どんなライフスタイルを送りたいかを周囲に伝えることができます。
例えば、Appleの製品を使うことは、単に便利なガジェットを持っていること以上の意味があります。Appleを選ぶことで、「先進的で個性的」「独自のスタイルを持っている」といったメッセージを自分自身に伝え、他人にも示しているわけです。
7. ブランドは「長期的な関係性」
ブランディングは、一度の購入で終わるものではありません。ブランドとの関係は、時間をかけて築かれるものです。顧客は製品を何度も買うことで、そのブランドへの信頼を深め、さらに絆が強くなります。
例えば、Nikeの「Just Do It」というスローガンは、単なる広告文句にとどまらず、「挑戦する気持ち」や「自分の限界を超えたい」という価値観を顧客に伝え続けています。このメッセージは、Nikeの製品を購入するたびに、顧客の心に積み重なり、深い信頼と愛着を生んでいきます。
ブランドは目に見える要素(ロゴ、デザイン)だけではなく、見えない感情的、文化的なネットワークを作り出すプロセスです。それは「価値」を売るのではなく、「価値観」を共有することです。
人々に「このブランドが存在しなくなったら、社会が不完全になる」と思わせたとき、そのブランドは究極の成功を収めているといえます。
ブランディングとは、単に企業や製品を宣伝することではなく、顧客に深い共感や価値観を伝え、長期的な信頼関係を築くプロセスです。ブランドは、顧客がその企業や製品を通じて感じる「価値」や「共感」によって、真の力を持つのです。
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